2011/04/06
05:46:08
ある日の電車でのこと。
私は車両半ばの長いシートの端に座っていた。
向かい側のドア前に中年夫婦が立っている。
妻のほうは丸っこい身体で、いっぽう旦那のほうは白髪まじりだが細身でいいスタイルだ。
私は車両半ばの長いシートの端に座っていた。
向かい側のドア前に中年夫婦が立っている。
妻のほうは丸っこい身体で、いっぽう旦那のほうは白髪まじりだが細身でいいスタイルだ。
そのまるっこいおばはんが、どうも上下運動をしているようだ。
どこか一点を見つめながら黙々と。
つま先運動をすることによって、足が締まり、
そしてお尻もキュッと持ち上がる、という一時期流行ったのかもしれない運動だった。
おばはんは得意げだった。むぅ、いかにも得意げだ。
尻のふくらみの頂点が持ち上がることによって脚が長く見えるのよ。
殿方の視線はあたしの美脚に釘付けになるのよ、うふふ。
と言わんばかりの。
ところで、おばはんと旦那は向かいあっているものだから、
おばはんがクイッとつま先立ちするたびに、
まるで男にキスを求めて背伸びをするいまだツボミのごとき初々しいティーンの女子を思わせたが、
そんなことを考えると心の底から身震いしてきたので、
私はその考えをすぐさまぬぐい去ることにした。
まわりの視線を浴びていることに気づかないのだろうか。
しかし気づかないのも無理はないのかもしれない。
まわりの人は、ちらっと見ては、嗚呼いけないものを見てしまったとばかりに
すぐに目を背け、しかししばらくすると怖いものみたさ故に、
ふたたび見、またすぐ目を背け、という具合に繰り返している。
足の爪のニオイをかいでしまってその奇妙な中毒性に気づいた小学生のような反応だ。
もちろん私もその一人だった。
横の旦那は終始にこやかに、
うんうん、うん、うんうんうん、
とうなづき、
エラいねお前、そうそうその調子だよっ!とでも激励しているような顔つきだ。
徹頭徹尾にこやかである。
そんなだから、このオバハンは
いっこうに止める気配はない。
むしろ、自信に満ちている。
愛する旦那の応援があるから百人力だろう。
ふ、まったく…。
愛し愛され、幸せな夫婦だな。
と私はほほ笑ましく思い……たかったのだが
どうも一抹のむなしさにつつまれて、
心にわだかまりを残したまま
次の駅で電車を降りた次第である。
どこか一点を見つめながら黙々と。
つま先運動をすることによって、足が締まり、
そしてお尻もキュッと持ち上がる、という一時期流行ったのかもしれない運動だった。
おばはんは得意げだった。むぅ、いかにも得意げだ。
尻のふくらみの頂点が持ち上がることによって脚が長く見えるのよ。
殿方の視線はあたしの美脚に釘付けになるのよ、うふふ。
と言わんばかりの。
ところで、おばはんと旦那は向かいあっているものだから、
おばはんがクイッとつま先立ちするたびに、
まるで男にキスを求めて背伸びをするいまだツボミのごとき初々しいティーンの女子を思わせたが、
そんなことを考えると心の底から身震いしてきたので、
私はその考えをすぐさまぬぐい去ることにした。
まわりの視線を浴びていることに気づかないのだろうか。
しかし気づかないのも無理はないのかもしれない。
まわりの人は、ちらっと見ては、嗚呼いけないものを見てしまったとばかりに
すぐに目を背け、しかししばらくすると怖いものみたさ故に、
ふたたび見、またすぐ目を背け、という具合に繰り返している。
足の爪のニオイをかいでしまってその奇妙な中毒性に気づいた小学生のような反応だ。
もちろん私もその一人だった。
横の旦那は終始にこやかに、
うんうん、うん、うんうんうん、
とうなづき、
エラいねお前、そうそうその調子だよっ!とでも激励しているような顔つきだ。
徹頭徹尾にこやかである。
そんなだから、このオバハンは
いっこうに止める気配はない。
むしろ、自信に満ちている。
愛する旦那の応援があるから百人力だろう。
ふ、まったく…。
愛し愛され、幸せな夫婦だな。
と私はほほ笑ましく思い……たかったのだが
どうも一抹のむなしさにつつまれて、
心にわだかまりを残したまま
次の駅で電車を降りた次第である。
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