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SHINGO 5° TERASAWA blog
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21:25:03
すぐそこの遠い絆

タイトル:『すぐそこの遠い絆』
サイズ :F100号(1303×1620mm)
素材  :Acrylic on canvas

と名付けられたこの絵は、先日書いたように
ありがたくも賞をいただきましたが
いろいろな意味合いが込められた作品であります。


そもそも絵などというものは
鑑賞者の受け止めかたで、いかようにも解釈していただいて構わないのですけれども
この絵は、昨年の大震災後ひしひしと感じた「絆」をテーマに描き上げたこともあり
大震災から一年目のこの日に、僭越ながら
自身の思いを込めた解説を残しておきたいと思います。

大きく3つほどの意味合いがあり、

まず、狭い意味としては、
男女間の心のすれ違い。
そばにいるのにどこか別のページにいるような。
自然にこぼれていた笑顔もいつしか消え、
会話もただ変な間をうめるために無理に言葉を発しているだけのような。
あの頃のふたりは何処へいったのだろう
そんな、関係がういういしかったころへの憧憬。


第二に、より広義では、
現代社会の人間関係。
日進月歩でより便利な機器に満たされていくなかで
人々の心も機械化され表情を失くしてしまったように思える。
社会のシステムに順応するため、仮面をつくりだして
本心を隠しながら上手に人生を渡り歩いていく。
それができなければ、はみ出しものとされ、
嘲笑をかう。落伍者。

近所付き合いも減り、
マンションの隣人がどういう人で何をやっているのか知りもしない。
無関心、不干渉でいることが礼儀であるかのような人々。
自分が田舎育ちだから余計にそう感じるのかもしれない。

人情の消え去った街。
コンクリートだらけの灰色の街。
夜だけはきらびやかに彩る欲望の街。
つかの間の幻影。
あとに残るのは一抹のむなしさ。
鉛のような朝、うつろ人たちは、情報の飽和とストレスの重圧の渦中に再び流れいる。
そんな日常の繰り返し。

インターネットの普及で、世界中の人と近い関係になったけれども
実際に会ったことのない人であれば、その人は本当にそういう性格の人なのか
あるいは、ただネット上でのハンドルネームを演じているだけのキャラなのかもわかりはしない。
また、ひょっとすると何がしかの掲示板で会話してた人が
電車で横に座っているかもしれないし、電車に乗りながら携帯から同じ掲示板に書き込みしていてもお互い気づかず降車することもあるだろう。
そんな異相世界の交錯した遠近観。


最後に、
もっとも深い思いは、先に述べました
昨年の大震災以降、よく見かけるようになった「絆」という言葉にあります。

皆が一心となって助け合い、復興への思いを抱いているかと思えば
一方で、瓦礫処理のため多忙を極める建設業界に介入して
不当な高額料金で取引をしている黒い人々もいるらしい。

また、被災地で支援物資にきちんと整列して受け取ったり譲り合ったりする態度や、
ボランティアの活躍などを観た世界中の人々が
日本人の心は美しいと言っていたけれども
ニュースで流れているのは、結局きれいな面ばかり報道しているようで、
人々は横取りしたり、盗みがあったり、ねたみ、ひがみ合い、差別など
醜い面も多々あったそうだし
被災地の惨状にしても、
本当に無惨な光景は衝撃的すぎて映せないほどだったとききます。

また、福島の原発事故に関しては
各地の自治体の多くが
汚染物質の中間貯蔵施設の受け入れを拒否するなど、
じつに悲しいことです。
複雑な事情はあるのだろうけど。

しかし首都圏の自治体に関していえば
どれだけ今まで福島で発電されたエネルギーに恩恵を受けてきたと思っているのか。
東北の人が使うのではない電気をわざわざ福島で危険をともなって発電して
大量の電力を首都圏に供給してくれていたにも関わらず
事故が起きれば、知らんぷりとは。。
なぜウチで受け入れないといけないのだ、などとよく言えたものです。
一国の一大事であるのに、そこは運命共同体として考え、
一緒に背負っていくべきではないでしょうか。


堅く結ばれているようで、すれ違っている絆
すぐそばにいるのに、通じ合わない心。

そして、何も役立てない非力な自分へのやるせない気持ち。

とにかくそんな諸々の思いをこめて
魂をふり絞って描いた作品です。


今日は黙祷を捧げ
天皇陛下の哀悼の意を拝聴し、心に沁み入りました。

犠牲者の方々のご冥福を
心よりお祈り申し上げます。

※先日、かわさき市美術展が終わってから
解説を少しだけ添えてこの絵をアップしようと思っていたのですが
なかなか暇がなく、ようやく時間できたと思ったら
ちょうど震災から一年目の日ということもあり、
いっそう熱がこもって長々と述べてしまったようです。

長文お付き合いありがとうございました。


それではまた。

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