2019/06/24
19:15:48
同室ではないが、ハヤシダさん(仮名)という認知症らしい車椅子の老女患者がいた。
よく廊下に出ては日がな一日、早く~早く~、となにかを嘆いている。
早くぅ~、×数回 水~
早くぅ~、×数回 薬~
早くぅ~、×数回 お腹~
看護師 : お腹が何?
痛いぃ~ 早く~
早くぅ~、×数回 下痢~
看護師 : ハヤシダさんがんばって
ダメェ~、早くきてよ~
早くぅ~、変なんなっちゃうわよ
早くぅ~、困るわよー
とまあそんな感じだ。
あまりに囃し立てるハヤシダさん、おれはいつしかハリーさんと呼ぶことにした。
(むろん、心の中でである。)
そのハリー婆さんが5/10午前7時ごろ、
おれがトイレから出るとロビーのほうから、早く~と聞こえる。
ハリーさんがロビーで車椅子からコテンと落ちて倒れている。
看護師だれも気づかず、あるいは気づいているが他の患者の対応に追われているのか。
おれは近くの部屋の看護士さんに声をかける。
「えー、ハヤシダさん!どうしたの?落ちちゃったの?」
と起こしに行くが、「誰かー、手を貸してくださいー」とやっと他の看護師2、3人も他の部屋から出てくる。
======
また別の爺さんも落下した。
こちらも同室ではないが向かい部屋のイシイさん(仮名)というかつてヒッピーだったような風貌の爺さんがいるのだが、
翌5/11早朝 6:45、ドシンと物音がしたかと思うと、イテテテテテと叫び声が聞こえてきた。
あわてて看護師がかけつける。
「ええー、どうしたの?変な形になってるよ、大丈夫?動ける?」
ベッドから降りて体勢を崩しカーテンを掴んだところクルッとカーテンごと回って落ちたらしい。
尻餅をついて座ったままだ。スジか骨か。
「いったんベッドに座りましょうか」
と看護師が手を貸すも、イテテテテ。
「ちょっと先生呼んでくるから。そのまま動かないでね」
返事の代わりにイテテテテ、とずっと言っている。
あるいはうなづく仕草はしたのかもしれないが、おれのところからは見えなかった。
医師が来る。
なになに骨とかいう部位(骨盤のこと?)が折れてたら問題だといい、その場でレントゲンを撮るという。
ポータブルレントゲンの存在を初めて知る。
携帯用レントゲンが来るまで数十分かかった。イシイさんは時おり痛み嘆いていた。
すぐにレントゲン撮影。
骨盤が折れていた。そこに大腿骨が食い込んで股関節がずれてしまっていて左右の足の長さも変わった。
高齢のため手術は控えたほうがいい、と。
======
翌日の夜、はからずもハリーさんと話す機会があった。
おれはロビーで作業していた。
はやくぅ〜、はやくぅ〜という声が近づいてくる。
「ハヤシダさん、ちょっとここで待っててくれる?すぐ戻るからね」
と看護師さんがお仕事中すみませんねとハリーさんをいったんおれの横に置いていく。
しばらく無言。
カタカタカタとタイピング音だけが響く。
しかしおれはハリーさんの視線の圧を感じてどうも集中できない。
するとハリー婆がぼそり、「あなたも可哀想ね」
「え?」
「置いてけぼりにされて」
「いやいや、僕は…」
「あなた、呼べばいいじゃない?知り合いなんでしょ?」
患者と看護師という関係で確かに《知り合い》ではあるが、おれはここにPC作業をしに自分でやってきたのであり、何も困っていない。
看護師さんを呼ぶ必要は毛ほどもない。
(むしろハリー婆に話しかけられて困っている)。
その旨つたえると、
「あなたもヒドイのね」
エエッ
「ここのひとはみーんな不親切だわ、ほんと」
ちょ。
その後もぶつぶつ何かつぶやいていたが、おれに向けてでも無さそうなのでシカトしていると、
「ねえ、ちょっと〜、はやくぅ〜」
と暗い廊下にむけて叫びはじめる。
看護師が戻ってきて、平和と安寧のうちにことなきをえた。
よく廊下に出ては日がな一日、早く~早く~、となにかを嘆いている。
早くぅ~、×数回 水~
早くぅ~、×数回 薬~
早くぅ~、×数回 お腹~
看護師 : お腹が何?
痛いぃ~ 早く~
早くぅ~、×数回 下痢~
看護師 : ハヤシダさんがんばって
ダメェ~、早くきてよ~
早くぅ~、変なんなっちゃうわよ
早くぅ~、困るわよー
とまあそんな感じだ。
あまりに囃し立てるハヤシダさん、おれはいつしかハリーさんと呼ぶことにした。
(むろん、心の中でである。)
そのハリー婆さんが5/10午前7時ごろ、
おれがトイレから出るとロビーのほうから、早く~と聞こえる。
ハリーさんがロビーで車椅子からコテンと落ちて倒れている。
看護師だれも気づかず、あるいは気づいているが他の患者の対応に追われているのか。
おれは近くの部屋の看護士さんに声をかける。
「えー、ハヤシダさん!どうしたの?落ちちゃったの?」
と起こしに行くが、「誰かー、手を貸してくださいー」とやっと他の看護師2、3人も他の部屋から出てくる。
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また別の爺さんも落下した。
こちらも同室ではないが向かい部屋のイシイさん(仮名)というかつてヒッピーだったような風貌の爺さんがいるのだが、
翌5/11早朝 6:45、ドシンと物音がしたかと思うと、イテテテテテと叫び声が聞こえてきた。
あわてて看護師がかけつける。
「ええー、どうしたの?変な形になってるよ、大丈夫?動ける?」
ベッドから降りて体勢を崩しカーテンを掴んだところクルッとカーテンごと回って落ちたらしい。
尻餅をついて座ったままだ。スジか骨か。
「いったんベッドに座りましょうか」
と看護師が手を貸すも、イテテテテ。
「ちょっと先生呼んでくるから。そのまま動かないでね」
返事の代わりにイテテテテ、とずっと言っている。
あるいはうなづく仕草はしたのかもしれないが、おれのところからは見えなかった。
医師が来る。
なになに骨とかいう部位(骨盤のこと?)が折れてたら問題だといい、その場でレントゲンを撮るという。
ポータブルレントゲンの存在を初めて知る。
携帯用レントゲンが来るまで数十分かかった。イシイさんは時おり痛み嘆いていた。
すぐにレントゲン撮影。
骨盤が折れていた。そこに大腿骨が食い込んで股関節がずれてしまっていて左右の足の長さも変わった。
高齢のため手術は控えたほうがいい、と。
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翌日の夜、はからずもハリーさんと話す機会があった。
おれはロビーで作業していた。
はやくぅ〜、はやくぅ〜という声が近づいてくる。
「ハヤシダさん、ちょっとここで待っててくれる?すぐ戻るからね」
と看護師さんがお仕事中すみませんねとハリーさんをいったんおれの横に置いていく。
しばらく無言。
カタカタカタとタイピング音だけが響く。
しかしおれはハリーさんの視線の圧を感じてどうも集中できない。
するとハリー婆がぼそり、「あなたも可哀想ね」
「え?」
「置いてけぼりにされて」
「いやいや、僕は…」
「あなた、呼べばいいじゃない?知り合いなんでしょ?」
患者と看護師という関係で確かに《知り合い》ではあるが、おれはここにPC作業をしに自分でやってきたのであり、何も困っていない。
看護師さんを呼ぶ必要は毛ほどもない。
(むしろハリー婆に話しかけられて困っている)。
その旨つたえると、
「あなたもヒドイのね」
エエッ
「ここのひとはみーんな不親切だわ、ほんと」
ちょ。
その後もぶつぶつ何かつぶやいていたが、おれに向けてでも無さそうなのでシカトしていると、
「ねえ、ちょっと〜、はやくぅ〜」
と暗い廊下にむけて叫びはじめる。
看護師が戻ってきて、平和と安寧のうちにことなきをえた。
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