2019/06/06
04:00:56
同室の、糖尿病患者、70代のフルカワさん(仮名)。
血糖値400以上を叩き出しながら、
隠れてせんべえを四六時中食べるツワモノ爺さんである。
むろん、110とかの安定した数値のときも多かったが、
400越えを三度は聞いた。
食後もすぐにせんべえを食べる。
ジュースも糖分の入ったのが何本もテーブルに乗っている。
先生が様子を伺いに来るとよく突っ込まれていた。
「フルカワさん、なーんか、いい匂いさせてんじゃん」
「へへ、2〜3枚だけね」
「とてもそんな量じゃないよね、このゴミ箱見ると」
「へへへ」
「ずっと治らないよ?」
「だって楽しみっていやあ、食べることしかねえし」
「間食禁止ってわけじゃないんだけどさ、あんまりひどいと禁止にするよ?」
このフルカワ爺さん、来る看護師みんなに出身はどこか、いまどこに住んでるのか聞いた。
で、聞かれてもいないのに自分の出身と住まいを言う。
「俺は鹿児島」「そうなんですねー」
「種子島、わかる?鉄砲の」「わ、すごい」
「んで、俺はさ、◯◯××マンション知ってる?この近くの、大きいマンション」
「あー、知ってるかもー」おれも知っていた。
「そこの12階に住んでんだよ、独りで。さびしいだろ?」
おかげでフルカワさんの自宅は夢に出るぐらい刷り込まれ
各看護師のステータスも知らぬ間に頭に入ってしまった。
この子は寮に住んでるのか、この子は地元がこの近所なんだとか、あ、この人は「あんた彼氏は?」と爺さんに聞かれ、「こないだ別れたとこで独り身なんです〜」とか言ってたな、等々。
ある日、看護師さんの一人が沖縄出身と聞いた爺さんは、
「どこ?ナサ?」
「え?」
「沖縄のどこ?」
「宮古島です」
「そっか、宮古か〜、ナサと石垣は行ったことあるんだけどなあ」
「そうなんですねー。那覇も石垣もいいところじゃないですかぁー」
看護師はいつだって冷静でやさしい。
尊敬する。
またあるとき、看護師さんが血糖値やら検査中、フルカワ爺は童謡「のばら」のメロディを鼻歌で歌ってる。
看護師:それ、なんでしたっけ?
うーん、わかんねえけど。歌詞も出てこねーし。
翌朝、ごきげんなフルカワ爺、歌詞を思い出したらしい。
♫ わらべは みーたーりー
いなかの ばーら ♫
と歌っていた。
田舎??
「野なか」のはずだが、わざとだろうか。
故郷種子島に想いを馳せ、田舎の薔薇と歌ったのだろうか。
他にも、聞き覚えある昔の歌謡曲や民謡を口ずさんでいたが、
僕には曲名はわからなかったし、
ゆえに歌詞も正しかったのかもわからない。
(つづく)
血糖値400以上を叩き出しながら、
隠れてせんべえを四六時中食べるツワモノ爺さんである。
むろん、110とかの安定した数値のときも多かったが、
400越えを三度は聞いた。
食後もすぐにせんべえを食べる。
ジュースも糖分の入ったのが何本もテーブルに乗っている。
先生が様子を伺いに来るとよく突っ込まれていた。
「フルカワさん、なーんか、いい匂いさせてんじゃん」
「へへ、2〜3枚だけね」
「とてもそんな量じゃないよね、このゴミ箱見ると」
「へへへ」
「ずっと治らないよ?」
「だって楽しみっていやあ、食べることしかねえし」
「間食禁止ってわけじゃないんだけどさ、あんまりひどいと禁止にするよ?」
このフルカワ爺さん、来る看護師みんなに出身はどこか、いまどこに住んでるのか聞いた。
で、聞かれてもいないのに自分の出身と住まいを言う。
「俺は鹿児島」「そうなんですねー」
「種子島、わかる?鉄砲の」「わ、すごい」
「んで、俺はさ、◯◯××マンション知ってる?この近くの、大きいマンション」
「あー、知ってるかもー」おれも知っていた。
「そこの12階に住んでんだよ、独りで。さびしいだろ?」
おかげでフルカワさんの自宅は夢に出るぐらい刷り込まれ
各看護師のステータスも知らぬ間に頭に入ってしまった。
この子は寮に住んでるのか、この子は地元がこの近所なんだとか、あ、この人は「あんた彼氏は?」と爺さんに聞かれ、「こないだ別れたとこで独り身なんです〜」とか言ってたな、等々。
ある日、看護師さんの一人が沖縄出身と聞いた爺さんは、
「どこ?ナサ?」
「え?」
「沖縄のどこ?」
「宮古島です」
「そっか、宮古か〜、ナサと石垣は行ったことあるんだけどなあ」
「そうなんですねー。那覇も石垣もいいところじゃないですかぁー」
看護師はいつだって冷静でやさしい。
尊敬する。
またあるとき、看護師さんが血糖値やら検査中、フルカワ爺は童謡「のばら」のメロディを鼻歌で歌ってる。
看護師:それ、なんでしたっけ?
うーん、わかんねえけど。歌詞も出てこねーし。
翌朝、ごきげんなフルカワ爺、歌詞を思い出したらしい。
♫ わらべは みーたーりー
いなかの ばーら ♫
と歌っていた。
田舎??
「野なか」のはずだが、わざとだろうか。
故郷種子島に想いを馳せ、田舎の薔薇と歌ったのだろうか。
他にも、聞き覚えある昔の歌謡曲や民謡を口ずさんでいたが、
僕には曲名はわからなかったし、
ゆえに歌詞も正しかったのかもわからない。
(つづく)
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