SHINGO 5° TERASAWA blog
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    16:09:40
    駅に向かっていた。
    近道の路地はせまい。
    人がすれ違うにはぎりぎりなほど。

    前方に老婆がカートを押し、歩いていた。
    いや、歩いていた、とは自信をもって言えない。

    スーパースロー映像のように実に緩慢な動作なのだ。
    いや、能か狂言師の所作というべきか、よもや太極拳の達人なのかもしれぬが、まあようするによくテレビとかで見る、水面に物が落ちた瞬間の冠だとか、カワセミのはばたく羽根の動きだとか、芸人どもがドッキリ仕掛けられて驚愕の表情の変遷のコマ送り逐一を超低音くぐもったボイスで醜態をさらされてしまうようなアレだ。

    宇宙の時間の流れは一定ではないという。
    人それぞれについても、各々の波長によって感じる時間の長さが変わるそうである。
    ことこの老婆においては、一日は一瞬にして過ぎ去り
    周りのすべての事象が残像を痕にのこすほど、めまぐるしく飛び交っているのかもしれず
    はからずも老婆と波長を共にしたならば、つまりセックスなどして陰陽の契りのすえ繋がって同調してしまったならば、何度もまぐわいを続けるうちにいつしか矢のごとく過ぎ去る周りの世界をも当たり前のものと見なすようになり、あっという間に数十年数百年が過ぎ去ったことに気づいた時にはすでに遅し、でもまあいいかぐへへへと老婆との情夜にもどってしまうほど魔性の老体の虜になっているのかもしれず、つまりジェロントフィリア(老人性愛)嗜好が芽生えてしまうなどという性的倒錯がなきにしもあらず、万一何がしかの原因で色情狂老婆の束縛から逃れられたとしても、(ところで何故に老婆との性交渉にこだわり続けているのか自分でも不明だが筆がすべるがままの単なるノリである勢いである。どうかご寛容に。しかしながら、となれば自分の深層心理には老人性愛へのあこがれが少なからずあるものと思われ、これは一度フロイト的分析をしてもらわねばとも懸念がわいてきたのだけれどもまあともかく)戻った世界には知り合いはおらず栄えていたはずの街も見る影もなく、悲しみにうちしずむことだろう。
    今なら浦島太郎の気持ちがわかるような気もする。
    そんな絶望のさなか、玉手箱を差し出されたら、とりあえず開けるよ、そりゃ。
    しかも龍宮の絶世の美女からのプレゼントでしょ、開けない手はないよ、そりゃあ。
    即刻ジジイになって瞬時に老衰して死ぬのも本望ではないか。

    さて、それほどのろい老婆なのである。
    (もはや、なんのこっちゃわからぬ)
    見かねた自分は、追い抜くことにした。
    老婆はほぼ真ん中を、カートを押してゆるりと進んでいる。
    後ろにはてんで無関心の様子。
    じゃっかん身体をななめにすれば、さささとすり抜けられる。
    それでもしかし自分は、礼儀を第一としたい人間である。
    「すみませ〜ん」
    と声をかけるも無反応。
    耳が遠いのだろう。しかたない。
    自分は決心した。
    強行突破することにした。
    先に述べたように、身体をななめにひるがえし
    老婆にふれることなく華麗に追い抜くことができた、とその刹那

    「わっ!!
     うわわわわーーーっ!
     びっくりしたぁぁーー!
     もうーーーー!!」

    などと言い放ち、数十センチほど横に瞬間移動したのである。
    ノミかよ。
    目にも止まらぬ速さでピョンと。

    老婆の目は大きく見開き、ドーラおばさんがパズーを威圧してるような、あるいは湯婆婆が飛びかからんとするような、
    簡単にいえば魔女のようにも思えた。
    やはり魔性の老婆なのかもしれないと思った。

    自分も、思わずギョっと飛びのいた。

    技を極めた仙人たちは、無駄な動きは一切せず
    ここぞというときに、神懸かり的な速さで技を繰り出すというが
    あながちこの老婆も隠れ仙人なのかもしれぬ。
    あるいは、中世に欧州で流行した魔女狩りから逃れ
    はるばる黄金の国までやってきて
    何百年も密かに生き抜いている魔女の残党なのかもしれぬ。

    そうこう思いめぐらしているうちに
    老婆は何事もなかったかのように
    すでにデフォルト状態に戻ったらしく
    常軌を逸したゆるやかさでカートを押している。
    うつろな目はどこを眺めているのかわからぬ。

    もはや老婆の視界には自分は存在しない様子。

    自分は、感心とともにどこか悔しさも心にくすぶって駅にたどり着いた次第である。

    こっちがびっくりしたわ。
    こっちが叫びたかったわ。

    ではまた。



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    コメント
    違う時空で生きてるお年寄りいますね~

    近所に車道の真ん中を自転車で進むお年寄りが出没します…
    クリープ現象でも轢いてしまいそうなほどゆっくりなのに、転ばないのが謎なんですが(笑)

    突然、目の前を斜め横断してくれるので、
    心臓に悪いです…

    お年寄りの皆様に、もうちょっとこちらに興味を持っていただけると私たちも長生きできそうです(笑)

    emiko│URL│2015/06/14(Sun)23:17:21│ 編集
    Re: タイトルなし

    > 近所に車道の真ん中を自転車で進むお年寄りが出没します…
    > クリープ現象でも轢いてしまいそうなほどゆっくりなのに、転ばないのが謎なんですが(笑)

     もはや仙人ですね。デフォルトで太極拳してるような達観した状態かもしれません。


    > 突然、目の前を斜め横断してくれるので、
    > 心臓に悪いです…

     御年寄りがたからしてみれば、マトリックスで銃弾をよけるような時間軸で
     あなたの車をかわしているのかもしれません。

    寺澤晋吾(5°)│URL│2015/06/26(Fri)10:16:07│ 編集
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    プロフィール

    寺澤晋吾(5°)

    Author:寺澤晋吾(5°)
    汎創作家。

    [音楽関連]
    ロックバンド fade [2002-2014]
      のギタリスト。現在無期限活動休止中。

    [美術関連]
    2002年頃より、カフェやギャラリーで展示を開始
    2011年 第44回かわさき市美術展 入選
    2012年 第45回かわさき市美術展 優秀賞
      2016年『三人展』@ギャラリー国立
      2017年 個展@ギャラリー国立
        第65回光陽展 入選
          第102回二科展 入選

    [文筆関連]
    下記5作品を電子出版
    2008年『夕焼けとにょろり』
    2008年『七日目の蝉』
    2010年『無理矢理な人たち~この素晴らしき世界~』
    2014年『バタフライダンスにSAYONARA』
      2016年『ラバープラネット』

      「寺沢ごど」としてエッセイも3作品、電子書籍で発売中。

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    小説/エッセイ等、8作品を
    発売中。(電子書籍のみ)

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