SHINGO 5° TERASAWA blog
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    23:37:35
    エレベーターに独り、乗った。
    扉が閉まるとサササッ。

    ふと、黒い異物が隅のほうで動いた。


    「G」だった。
    生ゴミ、汚濁、腐敗、あらゆる闇の支配者
    アンダーグラウンドの帝王ゴキブリであった。

    エレベーターは瞬時にして拷問空間へと変わる。
    ふたりっきりの密室。
    目的地まで開くことはない。
    魔の数十秒間。

    むりむり。
    ジョジョ初期のディオふうに無理を羅列したいくらい。

    時間的には7階から1階へと降りるだけなので
    ほんの短い間のように思われるが
    古い雑居ビルのため、やたら進みが遅い。
    それに、「彼」と同乗しているから尚更長く感じたのかもしれない。

    この場合、配置的に自分はどこにいるのが
    ベストポジションなのか思案しつつ、
    すり足で対角線で一番遠い場所へ移動していたのだが

    こちらが少しでも動くと
    「彼」もビクンと反応する。
    反応して移動されたら、こちらもすり足で
    また対角線で最も遠い所を探し出す。

    エレベーターBOX内はほぼ正方形だな直角二等辺三角形の三辺の比はエエーッと1:1:√2だっけか、しかしルートってなんだっけ対角線の長さは結局どうなるんだイヤともかく対角線で向かい合うのが一番距離があること間違いないハッ3Dを忘れてたぜスリーディーつまりこのボックスを斜め上に這い上がってヤツと対角の上の隅にいればそこが一番遠くなる、安住の地ってわけだ、そうアシタカグモが家の上から見張るようにシメシメとなフフフ見えた、オレにはもう敵はいまい!まて、立方体の方程式はどうなる?は、失念しておった私としたことが!どんなだっけ?そうだ中学卒業と同時に記憶から抹消したではないか失恋の想い出とともに忘却の彼方、奈落の底へそうだたしかあの時も中秋の名月のこの時分だったな…いやいや何を言ってるんだと危機回避本能が働いたのか全く関係ない事柄が中学生以来浮かんできたりし自問自答がかけめぐったが、アセった時ほど無駄な動きがあるものだと菩薩の心を思い出し、もう微動だにしないことに決めた。

    しかし、目を離して「彼」に背を向けていると不安になるから
    じーっと見つめたまま到着を待った。

    1階についた。扉があく。
    ふーっ。やれやれ。
    そそくさと立ち去ろうと思ったら、
    「彼」のほうが早く、そそくさとドアのあたりまで移動した。
    そのまま出ていってくれればいいものを
    どうしたことかドアの溝あたりで「彼」はとまった。
    ワレおちょくりやがって。
    おかげで自分は、またがないといけなくなった。

    ひと息ついて気合いを入れる。
    ようやく一歩踏み出そうとすると
    ちょうど男が一人やってきてぶつかりそうになった。

    「あ、すみません」

    「いえいえ、こちらこそ」

    と言って、扉の溝を見ると「彼」がいない。
    もしや、男が入ってくるどさくさに紛れて外に逃げちゃったかな、それだといいな。
    あるいは、溝の奥のほうに入っていったなら、それはそれでドアを閉めれば潰されるだろう、ひひひ。
    いずれにせよ、危機は逃れた。
    半ばほくそ笑みながら自分はCLOSEボタンを押した。

    「あれ、今降りようとしてませんでした?」
    男が言う。
    まったく、余計なツッコミするでないよキミ。

    「あ…、いえ…。わ、忘れ物をちょっと思い出しまして…はは」
    と、おかげで動揺して怪しいやつじゃないか。

    「あーそうなんですねえ」

    「えーっと…、何階ですか」

    「3階でお願いします」

    特に何事も起きず男は3階で降りた。
    と思ったら、次の閉まる瞬間
    サササと「彼」が溝から這い出て
    待ってましたと言わんばかりに内部に突撃侵攻してくるではないか。
    ナゼニ、ソノママ外ニ出テクレナイノデスカ!

    もうこの際自分も3階で降りよう、と
    OPEN押して閉まりつつあったドアを開けるも
    さきほどの男が「ん?」と怪訝な表情で見返したものだから

    「あ、ボタンまちがえました、あはは」

    と格好つけて閉めてしまった。

    さて、また二人っきりの密室である。
    「彼」との本日2度目のランデブー。
    たのしいなーたぁのしいなーつんつんつんなっかよっくしましょーつんつんつんお名前なんてえのぉぉぉぉ?手乗りゴキブリとかやってみようよーねえきみ。それかこのデジタル時代のまっただなかeメールの代わりに超アナログの伝書バトならぬ伝書ゴッキーになってヤなやつに手紙届けてくんなあいかなぁへへへそれこそまさにGメールじゃない?ねえきみ。

    もはや自分は精神崩壊間近かと思われたその刹那
    無の境地につつまれた。

    究極の飢餓状態だとか、ふとした危機状況で悟りは開くものらしい。

    老子だか荘子だかの言葉が頭に浮かぶ。

    ――池のほとりに美女が立ったとしても、魚は逃げる。
    魚たちにとっては、人間の絶世の美女も怪物としか思えないからだ。

    たしかそんな内容。
    それと同じく、よもやこのGはゴキブリ界で絶世の美女であるかもしれないではないか
    それを自分はびくびくおびえているのだ。

    ゴキブリにとっても自分は醜怪な巨人であって、怖い存在なのだ。

    あたたかく手を差し伸べてやろう。
    和議を結ぶのだ。
    未来永劫、本領安堵を約束しよう。

    目を仏のように、皿のようにしながら
    7階へ向かった。

    7階着。扉が開く。
    いったん出て階段で降りる手段もあったが、もはやその必要はなかった。
    「彼」を、(いや、絶世の美女と仮定したのだから「彼女」を!)
    奥に見ながら再度CLOSEボタンを押し、
    また一階まで本日三度目の密室ランデブーした次第である。

    降りるときはもちろんレディーファーストだ。
    (なにせG界の絶世の美女である!)

    「お先にどうぞ」
    自分がそういうと

    「彼女」は、おおきにと言い京女のようにしとやかに
    触覚をふるわせ、サササと闇に消えていった。


    ではまた。
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    コメント
    いやぁ~、またまたw
    ほんの数分のハプニング?が
    ちょっとした短編小説。
    こういう心理描写みたいの好き♡
    最近は蚊の問題とかもあるし、
    飛んでくる方々には御注意を。

    Coo│URL│2014/09/09(Tue)01:24:30│ 編集
    小悪魔ちゃんと言うか
    悪女と(悪)夢の一時でしたね(笑)

    距離を試行錯誤しても
    無駄無駄!と
    斜め上から滑空して
    マウントポジションとられるんですよ( TДT)

    どうせなら人間界の美女にマウントポジションとられたいです(笑)

    emiko│URL│2014/09/09(Tue)18:05:19│ 編集
    Cooさん
    > ちょっとした短編小説。
    > こういう心理描写みたいの好き♡

     ときおり妄想が暴走しますが、楽しんでもらえてるようで幸甚です。


    > 飛んでくる方々には御注意を。

     Gはあれだけ敏捷なのだから、せめて羽根は退化してほしいですね。

    寺澤晋吾(5°)│URL│2014/09/15(Mon)04:03:37│ 編集
    emikoさん
    > 小悪魔ちゃんと言うか
    > 悪女と(悪)夢の一時でしたね(笑)
    >
     あれで気絶して死んでたら、謎の密室殺人事件です。


    > どうせなら人間界の美女にマウントポジションとられたいです(笑)

     本望ですね。

    寺澤晋吾(5°)│URL│2014/09/15(Mon)04:06:13│ 編集
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    プロフィール

    寺澤晋吾(5°)

    Author:寺澤晋吾(5°)
    汎創作家。

    [音楽関連]
    ロックバンド fade [2002-2014]
      のギタリスト。現在無期限活動休止中。

    [美術関連]
    2002年頃より、カフェやギャラリーで展示を開始
    2011年『第44回かわさき市美術展』入選
    2012年『第45回かわさき市美術展』優秀賞
      2016年 10月『三人展』@ギャラリー国立
      2017年2月『個展』@ギャラリー国立
        3月『グループ展』@ギャラリー国立
        4月『第65回光陽展』入選

    [文筆関連]
    下記5作品を電子出版
    2008年『夕焼けとにょろり』
    2008年『七日目の蝉』
    2010年『無理矢理な人たち~この素晴らしき世界~』
    2014年『バタフライダンスにSAYONARA』
      2016年『ラバープラネット』

      「寺沢ごど」としてエッセイも3作品、電子書籍で発売中。

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    小説
    小説/エッセイ等、8作品を
    発売中。(電子書籍のみ)

    【エッセイ集】

    『奇人たちの黄昏れ 〜都会の隅の見聞録〜』
    奇人たちの黄昏れ
    108円(税込)

    『不器用な真実 〜なんでこうなるかな日記〜』
    不器用な真実
    108円(税込)

    『生乾きの日々 〜平熱と迷走の狭間で〜』
    生乾きの日々
    108円(税込)


    【小説】
    『ラバープラネット』
    ラバープラネット
    324円(税込)

    『バタフライダンスにSAYONARA』
    バタフライダンスにSAYONARA
    540円(税込)

    『夕焼けとにょろり』
    夕焼けとにょろり
    324円(税込)

    『七日目の蝉』
    七日目の蝉 表紙
    324円(税込)

    『無理矢理な人たち
    ~この素晴らしき世界~』
    無理矢理な人たち
    432円(税込)
    fade CDs

    『Crossroad ~History of fade~』
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    ¥3,600(w/tax)
    ■通常盤 [CD]
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    『天 ~TEN~』
    Ten
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    『Kings of Dawn』
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