SHINGO 5° TERASAWA blog
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    19:20:17
    先週のと或る深夜のこと。
    僕は蒲田から三宿まで歩いてしまった。

    はからずも、先日電子出版した拙著『バタフライダンスにSAYONARA
    の帝王ホリウチを自身で体現するようなハメとなった。
    (以下、長いです。3500字ほど)


    その夜、横浜の関内で飲み、帰りは比較的余裕を持って
    23時くらいに電車(京浜東北線)に乗った。
    いたって健全。
    おれってオトナ、ふ。
    そう思った。

    運良く座れた。
    しかしこれがすべての間違いであった。
    2駅乗って横浜で東横線に乗り換えるだけなのに、
    座ってしまった。
    しかもその2駅ぶんですら貪欲にも読書をしようと
    前日くらいから読み始めたスタンダール『パルムの僧院』のシオリをヒモ解いた。

    どういうわけか気づけば赤羽。
    東京の北端、北区アカバネである。
    『パルムの僧院』は始めに見開いたまま。
    横浜から瞬間移動した気分だったが
    すでに時刻は24時過ぎ。
    やばい。
    折り返しの電車はあるのか、なければタクシー?イヤイヤイヤ寝過ごした自身の過失の上さらにタクシー代を払って帰宅するなど自己嫌悪の極みに陥ること間違いない。そうだもう少し乗れば兄夫婦の家へそこそこ歩ける距離の駅があるはず、いやもしくは池袋の友達に電話して始発まで飲みに付き合わせるか、いやタクって池袋に行くのも癪だ、折り返しがあればそれで池袋まで…いや池袋は京浜東北線になかったような…ふとiPhoneをみると充電10%!これでは友達を電話で捕まえてブクロにいったところで連絡取り合えない…赤羽のネットカフェで始発待機か…およそそのようなことを寝覚めの脳フル回転で逡巡するが、そろそろドアが閉まる。決断しなければならない。そこへ「○番線に本日の最終列車、蒲田行きがまいります云々」とアナウンス。

    よし、ひとまず折り返して
    我が家に一番近いと思われる駅で降りてからまた考えよう。
    京浜東北線では品川が我が家に一番近いと思われた。
    そっからだとタクシーでも安いだろう。
    ハッ!?イヤイヤイヤイヤ…(と先述の自己嫌悪に陥りそうになり)
    なんだかタクシーで帰宅するのは「負け」のような気がしてきた。
    (なんに対してかわからぬが)
    こうなるともうダメだ。ゆるせん。
    意地でも歩くことにした。
    品川からだと、1時間半もあれば着くだろう、と。

    降りてからは地図を観ながら歩かねばならないため
    iPhoneの電源を切り、電池を温存することにした。

    折り返し最終の席はガラガラだった。
    ゆったりと座り、『パルムの僧院』を改めてひらく。
    さて、次に気づいたとき、終点蒲田であった。
    品川は遥か夢の果てに消えた。

    夢はつまり想い出のあとさき〜
    と何故かしらよくわからぬ陽水節が頭を流れるなか
    『パルムの僧院』はもはや終始安定、同ページである。

    どうやらスタンダールさんとは縁がないらしい。
    むしろリアルな僧院に入りたい。
    戒めねばならぬ。
    負けまくりの自分を。
    どうもウンコのような存在に思えてきた。

    イヤイヤ、今はこの状況をどう打破するかが先だった。
    蒲田……。
    東京の北端から最南端、大田区カマタである!
    まったくいったい何度瞬間移動すればいいのだ。
    ずいぶん、気分がまいった。
    玉手箱開ければいきなり老爺になってもおかしくない。
    むしろ、爺さんになって世捨て人にならんことを願った。

    イヤイヤイヤ、気落ちしてる場合ではない。
    余計なことに、僕は先ほど、意地でも歩くことにしたと
    心に決めていたことを思い出した。
    信念は曲げない。

    蒲田から歩くことにした。
    歩くゾくそぼけなすかぼちゃはげちゃびん。
    気合い充分にiPhoneの電源を入れ直し
    地図で帰路をチェック……
    しようと思ったらなぜか充電1%で、地図立ち上げた途端にOFF。
    おふっ…
    思わず外人のようなリアクションともダジャレともつかぬ擬音を発し、
    構内の地図を目に焼き付け、僕は歩き出したのだった。

    第二京浜まで出て環七に交われば、あとはわかる。

    ところがどうも第二京浜が出てこない。
    その前に池上通りにぶつかった。
    はてさて、名前は聞いたことがある。
    右に曲がってしばらく行けば環七にぶつかりそうな気がする。
    そうした。
    しかしいっこうに出てこない。
    不安解消のため、ちょうど視界に入ったコンビニでチューハイを買い、
    店員に環七はいずこに?と聞いた。
    若い店員はちょっとわからぬ風だった。
    やや、これはまずい、逆に離れてしまったのだろうか。
    若店員は店長を呼んだ。
    事務室からぬーっと海坊主のようにハゲ頭から登場させた五十がらみの店長が
    寝起きだかラリッてるかのようにとろんとした目で言うには

    「ついそこ、左」

    それだけだった。

    あの若造店員はなんで知らなかったんだと思うくらい
    「ついそこ」に環七はあった。

    ここにきてようやく
    俺は勝った。
    そう思った。

    甘かった。
    環七を昇っていれば目黒区、世田谷区と行き着くはずなのに
    いっこうに大田区のままである。
    ランニングマシーンのゴムローラーを無駄にあくせく歩いている気分だった。
    スクリーンに映される風景を観て自分が前進してるんだと錯覚させられているような。

    やはり俺は負けたのかと絶望しているところ
    ふと、行く手に倒れているママチャリを発見した。
    まったくどこのお母さんだ、こんな乱雑に停めるなんぞ
    やれやれと思いながら立て直してやろうとする。

    と、そこへ悪魔の誘惑があった。
    カギがかかっていないのだ。
    神様のおぼしめしに違いない。
    これで早く帰宅してぐっすりおやすみなさい、ということだろう。
    そうに違いない!
    おそらく30分もあれば家にたどり着く。

    ふたたび
    勝った!と思った。
    (なんて単純なのだ自分)

    いや待て、俺は試されてるのだ。
    昔、木こりが斧を泉に落としてしまい、精霊が金の斧と木こりの斧とを持って現れ、落としたのはどちらですかと問われ「金のほうです」と答えるようなものではないか。
    や、ちと違うかなこの例えは。
    ま、ともかく試練/戒めであるとみなし、やはり歩くことにした。

    だって僕がこのママチャリを乗って帰ることによって
    明日、保育園にいく母子はおんぶして徒歩で通わなければならないかもしれないではないか。
    子供は三日三晩泣き通しになることだろう。
    母親は絶望に打ちひしがれ、ねえお前様もう一台買っていいかしらと旦那に相談するも、なんだとぅウチの家計を考えてみろそんな余裕がどこにある?お前の管理が悪いんだ、ふざけるな取り返して来い、見つかるまで家には入れてやらないからな、ビシバシと往復ビンタを食らうかもしれない。魔がさした僕のおかげでこの母親は今後年老いるまでDVを受けるハメになるかもしれず、それが原因で子供はグレて夜な夜な盗んだバイクで環七を暴走し、子供が成人した途端に熟年離婚することになるかもしれない、僕のひょんな、些細な行動のせいで。せめて裁判費用だけは負担させてください。匿名で。

    それにそのころはすでに2時半、
    丑三つ時に子供シート付きママチャリを猛烈な勢いで飛ばしている37歳など、怪しすぎる。
    職務質問されるに相違ない。
    ママチャリのために前科者となるなど、耐えられない。
    強面の亭主にどつかれるのも、いたたまれない。
    さらに、運悪くそのママが常々下着泥棒に悩まされていて、さてはこの奥様の下着を盗んでいたのもお前だろエエッ?と取り調べ室で凄まれたりしたら…、と思うとカツ丼も喉を通らない。云々。

    歩きながらのチューハイは酔いが早く、深い。
    おかげで上記のような被害妄想にもキリがない。
    ひとまず、一服して落ち着かせることにした。

    静かだ。
    しかし都会の夜空に星はない、と改めて思う。
    これからの長い道のりを考えると
    人生とは長く曲がりくねった道なのだ、と改めて思うもこれから歩くのはいたって広くまっすぐな環七であった。

    さて、ここからは特に事件も起きなかったので
    (それに字数もはんぱなく増えてきたので)割愛させていただき、
    最後の場面を少しだけ。

    目黒通りにさしかかった時は神々しいものを感じた。
    東の空が白み始めていたのもある。
    碑文谷ダイエーあたりから学大へ抜けて三宿通りへ。
    ゴールは見えた。
    聖地が視界に入った巡礼者はこのような気持ちかもしれない。
    いつかスペインに行き、サンチアゴ・デ・コンポステーラを旅しよう。
    いや、その前に四国のお遍路さんか。
    神への道を歩くことにしよう。
    一瞬そう心に決めたものだったが
    翌日からやはりいつも通り酒にひたり
    露出度の増した街の女性たちに目移りするばかりで
    俗に溺れまくっておる次第です。

    あとでネットの地図で調べたところによると
    歩行距離約13km。

    せいぜい『母をたずねて三千里』の千分の一である。
    (一里=約4km)
    まったく大したことではない。

    やはり負けた。
    そう思った。

    さらに、サンチアゴ・デ・コンポステーラは
    「ピレネー山脈からすべて歩くと780~900kmの距離で、1日平均30km(早めの人)歩くと約1か月かかる。」
    (wikipediaによると)だそうな。

    まるで話にならない。
    大敗。

    願わくば巡礼路の野糞にでもならんことを。

    長文お付き合いありがとうございました。
    ではまた。

    PS:今『パルムの僧院』はようやく読み進んでおります。
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    コメント
    なんか…
    ちょっとした短編小説w
    きっと私なら、途中で諦めて
    朝まで一人カラオケとかw
    しそうです(^_^;)
    実際、帰りそびれてやった事あるし。
    夜中一人で歩いてると、アホそうなナンパ君と暇そうなホスト君が代わる代わる声かけてきてウザイんだもん。
    ちょっとしたシェルターですよw

    Coo│URL│2014/08/05(Tue)23:12:15│ 編集
    呑んだ後の電車は
    「座るな危険!」ですね(笑)

    先日、下北で呑んで帰ろうとしたら
    遅延で終電に間に合わなくなりそうになって
    ヒールで階段ダッシュは辛かった( ̄▽ ̄;)
    都内で呑むときは帰ることを考えないように
    普段なら朝まで呑んでるんで
    多少の寝過ごしは大丈夫ですが、
    目が覚めて「つくば市」だけは
    本当にビックリ(笑)
    茨城県まで運ばれちゃうとさすがに凹みます( ̄▽ ̄;)

    emiko│URL│2014/08/08(Fri)00:06:16│ 編集
    Cooさん
    > きっと私なら、途中で諦めて
    > 朝まで一人カラオケとかw

     あ、それもありでしたね。
     次回にでも。


    > 夜中一人で歩いてると、アホそうなナンパ君と暇そうなホスト君が代わる代わる声かけてきてウザイんだもん。

     そうですね、僕なんかの男性に対しては「オニイサン、マッサージ、ドウ?」ってのが多いですね。

    寺澤晋吾│URL│2014/08/09(Sat)21:21:47│ 編集
    emikoさん
    > 呑んだ後の電車は
    > 「座るな危険!」ですね(笑)

     三十路過ぎてこのかた、そんなところです。


    > 目が覚めて「つくば市」だけは
    > 本当にビックリ(笑)

     当方、小田急沿いに住んでたときは、気づけば小田原ってのもありましたね。

    寺澤晋吾│URL│2014/08/09(Sat)21:24:19│ 編集
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    プロフィール

    寺澤晋吾(5°)

    Author:寺澤晋吾(5°)
    汎創作家。

    [音楽関連]
    ロックバンド fade [2002-2014]
      のギタリスト。現在無期限活動休止中。

    [美術関連]
    2002年頃より、カフェやギャラリーで展示を開始
    2011年『第44回かわさき市美術展』入選
    2012年『第45回かわさき市美術展』優秀賞
      2016年 10月『三人展』@ギャラリー国立
      2017年2月『個展』@ギャラリー国立
        3月『グループ展』@ギャラリー国立
        4月『第65回光陽展』入選

    [文筆関連]
    下記5作品を電子出版
    2008年『夕焼けとにょろり』
    2008年『七日目の蝉』
    2010年『無理矢理な人たち~この素晴らしき世界~』
    2014年『バタフライダンスにSAYONARA』
      2016年『ラバープラネット』

      「寺沢ごど」としてエッセイも3作品、電子書籍で発売中。

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    『奇人たちの黄昏れ 〜都会の隅の見聞録〜』
    奇人たちの黄昏れ
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    『不器用な真実 〜なんでこうなるかな日記〜』
    不器用な真実
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    『生乾きの日々 〜平熱と迷走の狭間で〜』
    生乾きの日々
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    【小説】
    『ラバープラネット』
    ラバープラネット
    324円(税込)

    『バタフライダンスにSAYONARA』
    バタフライダンスにSAYONARA
    540円(税込)

    『夕焼けとにょろり』
    夕焼けとにょろり
    324円(税込)

    『七日目の蝉』
    七日目の蝉 表紙
    324円(税込)

    『無理矢理な人たち
    ~この素晴らしき世界~』
    無理矢理な人たち
    432円(税込)
    fade CDs

    『Crossroad ~History of fade~』
    Crossroad
    ■DX盤 [SHM-CD+DVD]
    ¥3,600(w/tax)
    ■通常盤 [CD]
    ¥2,500(w/tax)


    『天 ~TEN~』
    Ten
    ■DX盤 [CD+DVD]
    ¥2,880(w/tax)
    ■通常盤 [CD]
    ¥2,469(w/tax)


    『Kings of Dawn』
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    『Age of Innocence』
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    『To Find A Better Tomorrow』
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