2011/04/21
14:57:25
いつも音楽スタジオへ向かうには
電車だったり機材車だったりしますが
昨日は電車でした。
そんな途中の電車乗り換え時のこと。
電車だったり機材車だったりしますが
昨日は電車でした。
そんな途中の電車乗り換え時のこと。
機材のケースやらギターやらをカートに縛りつけてコロコロ転がして移動する習性上
駅のホームから改札への移動は、もっぱらエレベーターになります。
乗り換えの駅に着き、降車後すぐにはエレベーターには乗らずとゆうか乗れずにだいたい第2便となるさだめのようで、それとゆうのもこんなガボガボしたカートを引きずってホームにうごめく群衆の流れに負けじと急ぐのは結構ひんしゅくものに違いないとゆう認識のもと、ゆらりとまるで太極拳のような時空の流れを生み出しつつわれわれは進んでいきました。
(われわれというのは、もう一人バンドのメンバーと一緒にいたので。)
エレベーター前にたどり着くと
案の定、箱型昇降機第1便はすでに改札階へ発車した直後です。
まもなく、後ろに中(と大の半ば)肉中背のおっちゃんも一人並びました。
かさばる機材のわれわれと、小太りのおっちゃんの三人ですから
あと乗れるのは大人1人か2人くらいでしょう。
そこへ、ベビーカーを押しながら若奥様が
後方からやってくるのが見えます。
長い黒髪のうるわしき奥方。
ふと、あろうことか私のなかで理性に反して背徳の情がふつふつと沸き起こるのを感じました。
堕落、背徳、退廃に潜む美への果てしなき欲望、それが私の心を人生の若葉のころよりこのかた常に魅了してまいりましたなんていけませんいけませんそんなことを書く予定ではなかったのにどうしてあらぬ方へ向かうのだろうといつも思い悩むのです。
とにもかくにも、これでちょうどだなと思っていると
見たところ幼稚園か小1くらいの
制服姿の女の子たちが5人ほど
キャッキャキャッキャ言いながら
若奥様を追い抜き、われわれの後ろに並んでしまいました。
ぬぬ。それはいかんな、お嬢ちゃんたち。
私は思いました。
しかしふと、あろうことか私のなかで理性に反して幼心への果てしなき憧憬と……
いや、いけませんいけませんもうやめときましょう。
やがて、エレベーターが来ました。
われわれと、小太りのおっちゃんのあと
女の子たちがウキャキャと乗り込んできます。
もういっぱいです。
ベビーカーの若奥様はむなしく下を向き、次を待つ決心をしたようです。
そしてもうこの箱型昇降機第2便には、ちりほどにも未練はないと言わんばかりに
ものうげな眼差しをはるか遠くのくもり空に向けました。
あるいは、思い起こすたびに深まる悲しい過去を見ていたのかもしれません。
と、そのとき
「あー。ベビーカーの人いるから先に行かせてあげようよー」
ウキャキャキャ言ってた子のうち一人が気づき、皆に提案しました。
まわりの子たちもあっさりと、あそうだねと賛成し
「先にどうぞー」
と言って外に出ていきます。
む、むぅ。きみたち…。
私は思いました。
ベビーカーの奥方には青天の霹靂だったことでしょう。
「え、すみません」
といってそんな小さな女の子たちに何度も頭をさげながら乗り込み
ついでに何故かわれわれにまで頭を下げてきました。
イヤイヤイヤそんなわれわれなんてカスのごとき輩にそんな、
あるいはリステリンのクチュクチュして吐き出した液体のごとき穢れた存在のわれわれにそんな…
と逆にこちらが恐縮したくらいです。
エレベーターに沈黙が訪れ
無言の箱は、上昇していきました。
女の子たちはすでに階段から走って上がってきていました。
次のエレベーターを待たなかったようです。
はじめっからそうしときなさいよ。ひー。
などと私はけっして思わず、内心ではジーンとしていたのでした。
女の子たちはキャッキャいいながら去っていきました。
飴ちゃんあげたくなりました。
ではまた。
エッセイ集 各99円で絶賛発売中
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
『奇人たちの黄昏れ ~都会の隅の見聞録~』
http://www.amazon.co.jp/dp/B00OY64JI0
『不器用な真実 ~なんでこうなるかな日記~』
http://www.amazon.co.jp/dp/B00P7JZ1XK
『生乾きの日々 ~迷走と平熱の狭間で~』
http://www.amazon.co.jp/dp/B00PLBC7OU
駅のホームから改札への移動は、もっぱらエレベーターになります。
乗り換えの駅に着き、降車後すぐにはエレベーターには乗らずとゆうか乗れずにだいたい第2便となるさだめのようで、それとゆうのもこんなガボガボしたカートを引きずってホームにうごめく群衆の流れに負けじと急ぐのは結構ひんしゅくものに違いないとゆう認識のもと、ゆらりとまるで太極拳のような時空の流れを生み出しつつわれわれは進んでいきました。
(われわれというのは、もう一人バンドのメンバーと一緒にいたので。)
エレベーター前にたどり着くと
案の定、箱型昇降機第1便はすでに改札階へ発車した直後です。
まもなく、後ろに中(と大の半ば)肉中背のおっちゃんも一人並びました。
かさばる機材のわれわれと、小太りのおっちゃんの三人ですから
あと乗れるのは大人1人か2人くらいでしょう。
そこへ、ベビーカーを押しながら若奥様が
後方からやってくるのが見えます。
長い黒髪のうるわしき奥方。
ふと、あろうことか私のなかで理性に反して背徳の情がふつふつと沸き起こるのを感じました。
堕落、背徳、退廃に潜む美への果てしなき欲望、それが私の心を人生の若葉のころよりこのかた常に魅了してまいりましたなんていけませんいけませんそんなことを書く予定ではなかったのにどうしてあらぬ方へ向かうのだろうといつも思い悩むのです。
とにもかくにも、これでちょうどだなと思っていると
見たところ幼稚園か小1くらいの
制服姿の女の子たちが5人ほど
キャッキャキャッキャ言いながら
若奥様を追い抜き、われわれの後ろに並んでしまいました。
ぬぬ。それはいかんな、お嬢ちゃんたち。
私は思いました。
しかしふと、あろうことか私のなかで理性に反して幼心への果てしなき憧憬と……
いや、いけませんいけませんもうやめときましょう。
やがて、エレベーターが来ました。
われわれと、小太りのおっちゃんのあと
女の子たちがウキャキャと乗り込んできます。
もういっぱいです。
ベビーカーの若奥様はむなしく下を向き、次を待つ決心をしたようです。
そしてもうこの箱型昇降機第2便には、ちりほどにも未練はないと言わんばかりに
ものうげな眼差しをはるか遠くのくもり空に向けました。
あるいは、思い起こすたびに深まる悲しい過去を見ていたのかもしれません。
と、そのとき
「あー。ベビーカーの人いるから先に行かせてあげようよー」
ウキャキャキャ言ってた子のうち一人が気づき、皆に提案しました。
まわりの子たちもあっさりと、あそうだねと賛成し
「先にどうぞー」
と言って外に出ていきます。
む、むぅ。きみたち…。
私は思いました。
ベビーカーの奥方には青天の霹靂だったことでしょう。
「え、すみません」
といってそんな小さな女の子たちに何度も頭をさげながら乗り込み
ついでに何故かわれわれにまで頭を下げてきました。
イヤイヤイヤそんなわれわれなんてカスのごとき輩にそんな、
あるいはリステリンのクチュクチュして吐き出した液体のごとき穢れた存在のわれわれにそんな…
と逆にこちらが恐縮したくらいです。
エレベーターに沈黙が訪れ
無言の箱は、上昇していきました。
女の子たちはすでに階段から走って上がってきていました。
次のエレベーターを待たなかったようです。
はじめっからそうしときなさいよ。ひー。
などと私はけっして思わず、内心ではジーンとしていたのでした。
女の子たちはキャッキャいいながら去っていきました。
飴ちゃんあげたくなりました。
ではまた。
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