2015/07/20
23:04:31
暑い。非常に暑い。
昼だが、酒を飲みたくなった。
コンビニに行った。
本物のビールか、本格的なチューハイを買おうという心算(こころづもり)だった。
つまり発泡酒やその他醸造酒やら第三のビールなるものでもなく、そしてチューハイに関してはよくわからぬウォッカと人工甘味料で生成された甘ったるいそれではなく元祖タカラの缶チューハイである。これが近年気づいたことには、しっかりした味なのです。その代わり、よくわからぬSTRONG系くそチューハイよりは割高で、生粋なビールと同等の価格となる。
もう自分もよほどいい歳なので
金輪際そんな糞フェイク野郎なんぞ飲んでやらぬと心に決めたのだ。
良いものだけを嗜む習慣をつけてゆこう。
さすれば、他の五感も研ぎ澄まされ
あらゆる美への感応力も増すにちがいない。
近ごろますますすべての感覚が連動しているように思える。
すべての美は結局なんらかの調合、ハーモニーなのだ。
味覚、匂い、音、色彩、詩…etc
ある分野のすぐれたハーモニーを味わえば
別の分野をも感化し、あらたなビジョンを導いてくれる。
よって、毎日飲む酒も
高くつけどもケチらずに良いものを摂取していれば
芳醇な酒香に魅了された味覚は
おのずと、他の感覚をも磨いてくれるはずだ。
ええい、こんなゲスい酒なんぞ!いや、酒と呼ぶにはもったいない似非アルコールどもなんぞ!一滴たりとも飲んでやるものか!ええい、いまいましい!お前たちのためにこれまで自分の脳はどれだけ損傷を被ったことか!どれだけの時間を質の悪い二日酔いのために無気力にぐでぐでと寝て過ごしてしまったことか!嗚呼々々おもえば永い年月であった……。
…というようなことを、コンビニのドリンク棚の前で
ぶつぶつつぶやいていたのであるが
それほど自分の決心は固かった、38の午後。
のつもりが、氷結の新作を見つけてしまった!
チェリーサワーだってよ。ひゃ。
しかも、【限定】だってよ。
はッ、限定!
自分は限定には弱い。
いや、人類一般における永遠(トワ)の性(サガ)なのかもしれない。
それはたとえば、こんな夏の、しかも海の日の午後!
TUBEがかかってそうな浜辺
汗がきらめくうるわしき乙女の
ポカリスエットのよく似合う微笑みに
出会った時まさに起こるような
貞淑への決心の崩れようだった。
美徳はかくも容易によろめくのである。
うしろめたさなど宇宙の塵芥ほどもなく、
いとも簡単に氷結チェリーサワーに
手が伸びてしまったのだった。
のちのち忸怩(しくじ)たる思いに打ちひしがれるのかと思いきや
今のところまったく微塵もない。
さて、レジに向かった。
152円をぴったり(100円玉と50円玉+1円玉2枚)出したのに、店員は微動だにせぬ。
見たところ20代の麗しき乙女ふうだったが何故だか
まだ足りてねえよ脳たりんめが、と言わんばかりの表情である。
店員があまりにも早く出せよオーラを醸し出しているものだから
自分はひょっとして何か足りないのか、
100円玉のつもりが50円玉二枚と1円玉二枚になってしまっているのか…?
一応たしかめる。
やはり間違ってはいない。
よって、もう何を言われても
自身を正当化できる状況は確立された。
今一度威厳を取り戻し、店員がその銭を確認し回収するのを待った。
店員はまだ動かない。
強情なところが、この乙女、可愛くみえる。
(いや、どうでもいい。まどわされるな俺。)
はたして、ここにきて自分はまたもや一抹の不安がよぎったのである。
というのも、ずいぶん昔にコンビニで、110円の缶コーヒーを買ったところ
店員が言いにくそうに、(いやもしくは「笑いをこらえながら」のほうが正確なのかもしれないが)
「お、お客様…、申し上げにくいのですが……」
よく見てみると、11円。
二度見、三度見をマッハでループしてみても11円だった。
何を思ったか1円玉を100円玉と勘違いしたようである。
赤面した。
明らかに記憶では100円玉を取り出した映像があったのだが
よもや店員が俺に嫌がらせするために瞬時に俺の出した100円玉を1円玉にすり替えて後で自分のジュース代の足しにでもしようって魂胆かしかもこいつは生活のためにコンビニでやむなく働くマジシャンの卵だとか?
疑念はつきないが、ここはいさぎよく、いや残念ながら幻影としてあきらめ、財布から正真正銘の100円玉を探し出し、レジの銭受けへと提出したーー。
と、そんなことがあったものだから、
この夜も、正確な金額ちょうどを出した自信はあったのだけど
またもや恐る恐る斜視気味な視線を注ぎ、確認してしまった次第である。
店員はようやく気づいた。
「あ、あ、すみませんっ!
ちょうどでした!」
なぜだか、必要以上に焦ってて
こっちが申し訳ない気持ちになった。
自分は威厳を取り戻したついでに
はやくしろこの野郎、と威嚇もしていたのかもしれない。
そんなひと悶着の後に飲む氷結チェリーサワーは
美味しかったような気もするが
それはひょっとすると、ちょっとした勝ち誇った気分のため
実際以上に美味い酒に様変わりしてしまっただけなのかもしれず、
本当のところはわからないので
また普通の状態でこれは買って検証してみねばならぬ
いやーしかたないなあ、やめたかったんだけどなあ…
というわけで、心ならずもまた飲まないといけなくなった。
今後も何かと理由をつけて、飲み続けてしまいそうな気がする。
ではまた。
エッセイ集 各99円で絶賛発売中
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
『奇人たちの黄昏れ ~都会の隅の見聞録~』
http://www.amazon.co.jp/dp/B00OY64JI0
『不器用な真実 ~なんでこうなるかな日記~』
http://www.amazon.co.jp/dp/B00P7JZ1XK
『生乾きの日々 ~迷走と平熱の狭間で~』
http://www.amazon.co.jp/dp/B00PLBC7OU
昼だが、酒を飲みたくなった。
コンビニに行った。
本物のビールか、本格的なチューハイを買おうという心算(こころづもり)だった。
つまり発泡酒やその他醸造酒やら第三のビールなるものでもなく、そしてチューハイに関してはよくわからぬウォッカと人工甘味料で生成された甘ったるいそれではなく元祖タカラの缶チューハイである。これが近年気づいたことには、しっかりした味なのです。その代わり、よくわからぬSTRONG系くそチューハイよりは割高で、生粋なビールと同等の価格となる。
もう自分もよほどいい歳なので
金輪際そんな糞フェイク野郎なんぞ飲んでやらぬと心に決めたのだ。
良いものだけを嗜む習慣をつけてゆこう。
さすれば、他の五感も研ぎ澄まされ
あらゆる美への感応力も増すにちがいない。
近ごろますますすべての感覚が連動しているように思える。
すべての美は結局なんらかの調合、ハーモニーなのだ。
味覚、匂い、音、色彩、詩…etc
ある分野のすぐれたハーモニーを味わえば
別の分野をも感化し、あらたなビジョンを導いてくれる。
よって、毎日飲む酒も
高くつけどもケチらずに良いものを摂取していれば
芳醇な酒香に魅了された味覚は
おのずと、他の感覚をも磨いてくれるはずだ。
ええい、こんなゲスい酒なんぞ!いや、酒と呼ぶにはもったいない似非アルコールどもなんぞ!一滴たりとも飲んでやるものか!ええい、いまいましい!お前たちのためにこれまで自分の脳はどれだけ損傷を被ったことか!どれだけの時間を質の悪い二日酔いのために無気力にぐでぐでと寝て過ごしてしまったことか!嗚呼々々おもえば永い年月であった……。
…というようなことを、コンビニのドリンク棚の前で
ぶつぶつつぶやいていたのであるが
それほど自分の決心は固かった、38の午後。
のつもりが、氷結の新作を見つけてしまった!
チェリーサワーだってよ。ひゃ。
しかも、【限定】だってよ。
はッ、限定!
自分は限定には弱い。
いや、人類一般における永遠(トワ)の性(サガ)なのかもしれない。
それはたとえば、こんな夏の、しかも海の日の午後!
TUBEがかかってそうな浜辺
汗がきらめくうるわしき乙女の
ポカリスエットのよく似合う微笑みに
出会った時まさに起こるような
貞淑への決心の崩れようだった。
美徳はかくも容易によろめくのである。
うしろめたさなど宇宙の塵芥ほどもなく、
いとも簡単に氷結チェリーサワーに
手が伸びてしまったのだった。
のちのち忸怩(しくじ)たる思いに打ちひしがれるのかと思いきや
今のところまったく微塵もない。
さて、レジに向かった。
152円をぴったり(100円玉と50円玉+1円玉2枚)出したのに、店員は微動だにせぬ。
見たところ20代の麗しき乙女ふうだったが何故だか
まだ足りてねえよ脳たりんめが、と言わんばかりの表情である。
店員があまりにも早く出せよオーラを醸し出しているものだから
自分はひょっとして何か足りないのか、
100円玉のつもりが50円玉二枚と1円玉二枚になってしまっているのか…?
一応たしかめる。
やはり間違ってはいない。
よって、もう何を言われても
自身を正当化できる状況は確立された。
今一度威厳を取り戻し、店員がその銭を確認し回収するのを待った。
店員はまだ動かない。
強情なところが、この乙女、可愛くみえる。
(いや、どうでもいい。まどわされるな俺。)
はたして、ここにきて自分はまたもや一抹の不安がよぎったのである。
というのも、ずいぶん昔にコンビニで、110円の缶コーヒーを買ったところ
店員が言いにくそうに、(いやもしくは「笑いをこらえながら」のほうが正確なのかもしれないが)
「お、お客様…、申し上げにくいのですが……」
よく見てみると、11円。
二度見、三度見をマッハでループしてみても11円だった。
何を思ったか1円玉を100円玉と勘違いしたようである。
赤面した。
明らかに記憶では100円玉を取り出した映像があったのだが
よもや店員が俺に嫌がらせするために瞬時に俺の出した100円玉を1円玉にすり替えて後で自分のジュース代の足しにでもしようって魂胆かしかもこいつは生活のためにコンビニでやむなく働くマジシャンの卵だとか?
疑念はつきないが、ここはいさぎよく、いや残念ながら幻影としてあきらめ、財布から正真正銘の100円玉を探し出し、レジの銭受けへと提出したーー。
と、そんなことがあったものだから、
この夜も、正確な金額ちょうどを出した自信はあったのだけど
またもや恐る恐る斜視気味な視線を注ぎ、確認してしまった次第である。
店員はようやく気づいた。
「あ、あ、すみませんっ!
ちょうどでした!」
なぜだか、必要以上に焦ってて
こっちが申し訳ない気持ちになった。
自分は威厳を取り戻したついでに
はやくしろこの野郎、と威嚇もしていたのかもしれない。
そんなひと悶着の後に飲む氷結チェリーサワーは
美味しかったような気もするが
それはひょっとすると、ちょっとした勝ち誇った気分のため
実際以上に美味い酒に様変わりしてしまっただけなのかもしれず、
本当のところはわからないので
また普通の状態でこれは買って検証してみねばならぬ
いやーしかたないなあ、やめたかったんだけどなあ…
というわけで、心ならずもまた飲まないといけなくなった。
今後も何かと理由をつけて、飲み続けてしまいそうな気がする。
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